足りない、もっと。



澪の隣は、近いけど遠い。

うれしいけどくるしい。



複雑な気持ちを抱えながら、素直になれない言葉とは裏腹に素直な笑顔を返した。


今日もわたしたちは変わらないまま、いつも通り学校へ向かう。



「じゃあね、澪。授業中に居眠りしちゃだめだよ」

「うん」



澪のクラスの前で手を振ってから背を向ける。


2年連続クラスが離れて悲しいな。


なんてすでに何回思ったことか。

特に今年は修学旅行があるからぜったいに同じクラスがよかったのに……。




「あ、紗和」

「え?」



名前を呼ばれて振り返る。

すぐ目の前に澪がいて、わたしの髪にそっと触れた。



「今日もかわいい」

「っ、」

「じゃあね」



今度は澪が背を向けて教室に入って行った。


……ずるい。


澪はサラッとわたしが喜ぶようなことを言ってしまう。

きっと深い意味はない。


それでも、わたしを喜ばせるには十分すぎるんだ。