足りない、もっと。



「んー……でも紗和がいないと起きれないから、これからもお願いね」



頭の上に置かれる手と同時に顔を覗き込まれる。

きれいすぎる漆黒の瞳に見つめられて、大きく心臓が跳ねた。


寝起きでもお顔は最強のコンディションだし、すぐに家から出てきたのにサラサラな黒髪は寝ぐせひとつついていない。


学ランにパーカーという校則破りのスタイルは入学時からずっと。

おまけに両耳にはリングピアス。


顔も整っていて雰囲気もゆるい澪は女子からもすごく人気がある。


そんな澪とこうして一緒にいられるのは幼なじみだから。



「仕方ないなぁ……」



うそ、仕方なくないくせに。

空飛べるんじゃないかってくらいに内心は舞い上がってるのに。



「うん」



微笑む澪に、胸の高鳴りを抑えられない。

この笑顔を見れるのは幼なじみだから。


そばにいられるのは幼なじみだから。