足りない、もっと。



「待って!連絡先をっ……」

「さわらないで」


他校の子が手を伸ばした瞬間、澪が距離をとる。

ついに反応した澪だけど、低すぎる声にびっくりした。


他校の子も目をパチパチさせる。



「いま、紗和といるでしょ。邪魔しないで」

「す、すみません……」


弱々しく謝る他校の子を見ていると、なんとも言えない気持ちになる。

でもそうだよね。

いまわたしが澪と一緒にいるのに、わたしを無視して澪に話しかけるのは寂しい。


だって存在していないみたいだもん。

けど、澪がちゃんと見てくれている。


そんな澪がやっぱり好きだなぁ……。



「行くよ、紗和」

「うん」


澪に手を引かれて、お店の中に入る。

すぐに有紀ちゃんと福井くんも入って来てくれた。


さすがにお店のなかまでは、他校の子も入って来なくてホッと息をつく。