足りない、もっと。



「紗和、めっちゃかわいい!!」

「有紀ちゃんきれいすぎる!!」



着付けもヘアセットも終わり、有紀ちゃんと向かい合う。

念願の着物でテンションMAX!



「福井くんもぜったい意識しちゃうよ!」

「春瀬くんドキドキしちゃうって!」



褒め合いして自信をつける。

でも、なんだかいつもと違うだけで、なんでもできちゃいそうな気がする。


今日くらいはもっと澪に、素直になれたらいいな……。



「お、きたきた。こっち~!」


有紀ちゃんとドキドキしながら更衣室から出ると、すでに終わっていた福井くんが声をかけてくれる。

でも、もう息が止まりそうだった。


出た瞬間から見えていた。


壁にもたれてかかって眠そうにしている澪の姿が。



「ふたりともかわいいねー!」


ニコニコの福井くんに、有紀ちゃんは顔を真っ赤にさせている。



「ふ、福井くんも似合ってるね」

「ありがとー。着物ってテンション上がるな」

「わかる。いいよね」


有紀ちゃんはがんばって福井くんと話している。

わたしも……。