足りない、もっと。



でも……。



「これ」

「え……?」

「紗和はこれ」



いきなり後ろから手が伸びてきてびっくりする。

そしてその手が掴んだのは、わたしがいちばん惹かれた着物。


顔を横に向けると、澪のきれいな横顔がすぐ近くにあって心臓が大きく動いた。



「でしょ?」


わたしのほうに顔を向けて、至近距離で目が合う。

首を傾げて尋ねてくる澪にドキドキが止まらない。



「な、なんで……?」

「いちばん紗和が好きそうで、いちばん似合うと思ったから」

「っ……」

「あってる?」

「……うん」

「やっぱり」



うなずくとやわらかく笑ってくれた。

あーもう……。


ほんと、澪はずるい。

心臓が飛び出しちゃいそうだよ……。