足りない、もっと。



やっと手を離してくれる。

顔を横に向けると、至近距離で目が合って心臓が飛び跳ねた。


今日もかっこいい……。

いつもは眠そうなのに、いまはしっかりと目が開いてわたしを見ている。


そのせいで、ドキドキが止まらない……。



「澪……」

「紗和はさっきのやつと話したかった?」

「え……」

「おれ、邪魔した?」


寂しそうな瞳に、首を横にブンブンと振る。

ほんと澪はずるい。

素直じゃないわたしを、素直にさせちゃう。



「早く澪のところに行きたかった。自由行動、すっごく楽しみにしてたよ!」

「そっか」

「うん!」


わたしの返事に、澪もうれしそうに笑ってくれた。

その表情を見れて、心があったかくなる。


澪がうれしそうだと、わたしもうれしい。

やっぱりわたしの中心は澪だなって思う。



「甘ったるいね~。もう十分だから早く行こうよ。ね、有紀ちゃん?」

「へっ!?あ、うん……えぇ!?」



急に福井くんに名前を呼ばれた有紀ちゃんがパニックになってる。

というか、澪がいきなり後ろから抱きついてきて、わたしもパニックになってた。


ふたりにもよくわからない状況を見られてしまった……。