足りない、もっと。




「んー、でもおれが食べてなくなっちゃったね。だから三宅クン?にはおれが奢るよ」



そう言って視線をそいつに向ける。

この男……たしか前も紗和に話しかけてたな。


人の顔と名前を覚えるのは苦手だけど、紗和に近づく男は別。


こいつ、紗和のことが好きなんだ。


じっとその男を見るだけでわかった。


だって紗和はかわいいから。


もう、高校二年生。

紗和はこんな男と付き合ったりするのか?


……は?ありえない。

ないない。


一瞬でもしてしまったバカな思考に腹が立つ。



「澪、そろそろ行くぞ」



いろいろ考えていると、瑛介が入ってくる。

めんどくさい。

このまま紗和と一緒にいたい。


なのに、おれの首根っこをつかんで強制連行の態勢。


せっかくの紗和との時間なのに、瑛介が紗和に話しかけてる。



「じゃあまたね、紗和ちゃん」


挙句の果てに、紗和の名前を気軽に呼ぶ。

それに笑顔で手を振る紗和。


なにやってんの。