足りない、もっと。




「これなに?」


紗和の手にあるものを見る。


「シャインマスカット飴だよ。三宅くんにあげようと……あ」



説明してくれたけど、途中で紗和の手首をつかんで、それを自分の口へ運ぶ。

やっぱり、聞きたくないことだった。



「……んまっ」

「み、澪……?」



口いっぱいに飴の甘さが広がり、噛むとシャインマスカットのやわらかい甘さがやってくる。

紗和って甘いもの好きだよなぁ。

前は苦手だったけど、ずっと一緒にいるからおれも食べれるようになった。


紗和が食べてるものは、気になるから。


モグモグしていると、驚いたように大きな目を丸くしてまばたきをする紗和。

そんな顔もかわいい。



「あれ?だめだった?」

「だめっていうか……三宅くんにあげるって言っちゃってたから」



考えるように目を伏せる。

あーやだな。

おれ以外の男で悩まないで。


ほかの男のことなんて考えなくていいのに。