足りない、もっと。



ボーっとしていても、なんだかんだ面倒見のいい瑛介がおれを引っ張ってくれる。

だからめんどくさいことは瑛介に任せて、テキトーについていく。


そう思っていたのに、どっかの店がいっぱい並んでる通りで知らない人に囲まれた。



「春瀬くんはどこ行きたいー?」

「ここ、すごく有名みたいだよ」

「ちょっと、春瀬くんはうちらと同じ班なんだけど」

「そうだよ。ちゃんと自分の班に戻って」



なんか周りで言い合い?になってるし。

あー、めんどくさい。


こんなの、おれを囲んでする必要なくない?

違う場所でしてくれたらいいのに。


紗和にもまだ会えてないし……。

でも、こんなに人が多いなら、もしかして紗和もいるかもしれない。


知らない人はおいといて、紗和を探す。



……ほら、やっぱり。

紗和がいた。


おれの数メートル先に紗和がいる。

おれがいるって思えば、いつもそこに紗和がいるから。