足りない、もっと。




有紀ちゃんやったよー!!
と心の中で騒ぐ。

澪もちゃんと伝えてくれて感謝だよ。


自由行動がますます楽しみだなぁ。



「わたしも!自由行動になったら澪に連絡するね」

「わかった」



首根っこをつかまれた状態の澪がやわらかい笑顔で返事をする。


猫みたいでかわいいなぁ……。



「じゃあまたね、紗和ちゃん」

「うん、また……」

「紗和」

「え、っと……どうかした?」



福井くんに手を振ると、わたしの言葉に重ねて名前を呼ばれた。

手はなぜか澪に握られる。

不意打ちすぎて、緊張してきた。


手汗、大丈夫かな……。



「今日の朝ありがと。明日もよろしく」



きゅっと握った手に力がこもる。

それと同時にわたしの心臓もぎゅっとなった。



こくりと頷いたのを確認すると手は離れていく。



「澪、もう行くぞ」

「じゃ」



短くそれだけ言うと、福井くんに引きずられるように歩いて行ってしまった。