足りない、もっと。



もう一度、三宅くんの口へ運ぼうと手を動かすと名前を呼ばれた。

すぐに顔を向けてしまったのは、わたしを呼んだのが澪だから。


さっきまでは、わたしばかり見ていた。


女子に囲まれてるから気づかないと思ったけど、わたしに気づいてくれた。

そのことがすごくうれしい……。



「やっぱり紗和だ」

「あ、春瀬くんっ……」

「ちょっと待って」



女子の隙間を抜けて、わたしの元に来てくれる澪にドキッとする。

引き止められてもわたしのところに来てくれることがうれしい。


そう思っちゃうのは性格悪いかな?


でも、澪のことが好きなんだから、来てくれてうれしいに決まってる。



「会えた」



わたしの目の前に立って、やわらかく微笑む澪。

心臓が大きく音を立てる。



「会えたね」



内心ドキドキは止まらないけど、がんばって普通を装う。

笑顔を返すと、首をコテっと横に倒す。