足りない、もっと。



「紗和のおいしそう」

「食べる?」

「やったー。じゃあ、私のも」


有紀ちゃんとひとつずつ交換する。

おいしくて幸せな気持ちになり、思わず笑顔に慣れちゃう。



「……俺もそれ、食べたい」

「おい、藤村。それは……」

「いいよ。藤村くんもどうぞ」

「ありがと」



静かだった藤村くんだけど、よっぽど食べたかったみたい。

目がキラキラしてる。

三宅くんがなにか言おうとしても気にしていない様子。



「ずりぃ……俺、めっちゃ頑張ってるのに……」

「三宅くんもどうぞ。最後のひとつ」

「え?」

「おいしいから、おすそ分け」

「め、女神さま……!」

「ほぇ?」


意味がわからなくて首を傾げる。

三宅くんはうれしそうに微笑んだ。



「ありがとう!」

「どういたしまして」


わたしも笑顔で返す。

和気あいあいとした雰囲気で、やっぱりこの班でよかったなぁって思う。