足りない、もっと。



声だけでなんとなく澪がどんな様子なのかわかる。


会いたいなぁ。


今日は会えるかな?



「じゃあね。朝の支度するんだよ」

『……もう切るの?』

「え?」

『おはようのちゅーは?』

「なっ、に言ってるの。電話だよ?」

『ないと起きれないよ。いつもみたいに』

「したことないから!」



恥ずかしくて大きな声を出してしまった。

そのせいで、隣のベッドで寝ていた有紀ちゃんが目を覚ます。



「紗和、どうしたの?」

「あわわ、有紀ちゃん。ごめんね起こして」



焦っているわたしの耳元では澪の笑い声が聞こえる。


電話でもからかわれた……!



「澪……」

『ふ、紗和は朝からかわいいね』

「もういいから……」



これもわたしをからかうためのセリフだってわかってるもん。

澪は無気力でふわふわしてるのに、わたしをからかうときだけ生き生きしてるよね。


そんな澪も嫌いじゃないけど。

むしろそんな澪も好きだけど。


でも、澪にとっては特に深い意味はないんだよね。
と思って、落ち込むまでがセット。