足りない、もっと。



連絡先をスクロールして、目的の人物のところでストップ。

そんな数秒の作業で目は覚めて、心臓は大きく高鳴っている。


澪、出るかな?


ドキドキしながら、通話ボタンをタップしてスマホを耳に当てる。


まだ寝てるかな。
起きるのかな。

出なかったらどうしよう。

寝てるってことだよね。

あ、でもそうなれば同室の人が起こしてくれるかな。


さすがの澪でも、クラスメイトの声で起きるよね。



……でも、わたしがいちばんに声を聞きたいな。

わたしが澪を起こしたいな……。


部屋までは行けないって言ったけど、ほんとは行きたい気持ちでいっぱい。


修学旅行は楽しいけど、かわいい澪の寝顔を見れないのは寂しいよ……。




『……紗和』

「澪、起きた?おはよう!」

『ん、おはよ』



澪の少しかすれた声が届いて幸せな気持ちになった。

寝起きだから、声までとろんとしてる。


きっとまだ目もしっかり開いてなくて、顔もとろんとしてるんだろうなぁ。