「それより眠い。腕貸して」


どき、と心音が高鳴る。

歩くのもけだるそうな澪が、わたしの腕に自分の腕を絡めた。


余計に歩きにくい気がするけど、澪は眠いときによくこうする。



「がんばって歩いてね」

「ん」



わたしに軽く寄りかかる澪。

ほんのり甘い澪の香りが届いて、心臓が爆発しそうだよ……。



「紗和がいてよかった」



澪は周りに興味がない。

だけど、わたしとは幼なじみだからこうして近くにいられる。

一緒に帰れる。
話してくれる。
そばにいられる。


幼なじみは近くて遠いって聞くけど、本当にそうだ。


こんなに近くにいるのに、わたしは満足できない。

もっと近くにいきたいけど、きっとこれが限界なんだ。


これ以上は近くなれない。



「わたしも、澪と幼なじみでよかったよ」



ほんとはぜんぜん足りてないけど、わたしはこれからも澪と幼なじみでいるね。