足りない、もっと。


澪と帰ることはあんまりないからうれしいな。

しかも澪から誘ってくれるなんて、幸せすぎる……!


ドキドキしながら前髪を手ぐしで直したり、にやける顔を両手でおさえて引き締めようとしたりして澪を待つ。



「紗和」

「あ、澪!」

「元気」



澪が見えて名前を呼ばれて、反射でテンションが上がった。

それと比例して声も大きくなる。


澪に笑われるのはもう何度目か。

でも、今度は近くで笑顔を見れてうれしい。



「帰ろっか」

「うん!」


すぐに澪の前まで移動する。

毎日会ってても、会うたびにうれしくなる。


澪は魔法使いみたいだ。



「寝てたの?」

「気がついたらあの時間だった」

「だれも起こしてくれなかったんだね」

「紗和しか起こせないよ」



そんなセリフに深い意味はない。

けど、すぐに心が躍ってしまう。



「そっか」

「うん。さっきも、紗和の声が聞こえて目が覚めた」

「うそ!?3階まで聞こえるほど、声大きかった!?」



それは恥ずかしすぎる。