足りない、もっと。



その表情は完全に恋する乙女だ。

有紀ちゃんもわたしと同じで片想いをしている。

相手は澪がいつも一緒にいる友達。


そんな有紀ちゃんはこの修学旅行でがんばるみたいだ。


そうだよね。

せっかくの修学旅行だもん。


雰囲気も変わるし、この機会にちょっとでも近づきたいよね。



「がんばってね!」

「紗和は?」

「わ、たしは……幼なじみ、だから……」

「またそれ?」



有紀ちゃんは口を尖らせて不服そう。


でも、わたしと澪は幼なじみだから。

幼なじみじゃないといけないから……。



「でもさ、幼なじみなんだったらもっと一緒にいていいんじゃない?それこそ、修学旅行のときも会っていいじゃん」

「……いいのかな?」

「いいのいいの。会いたい以外に理由はいらないよ」



にこっとすごくかわいいスマイルを向けてくれる有紀ちゃんに力強く頷いた。


どうしても消極的になってしまうわたしを、こうして励ましてくれるのはいつも有紀ちゃん。