翌日、2月15日。

3年1組の教室。

朝礼の鐘が鳴る15分前。


山下 恵(やました めぐみ)が借りていたスティックのりを返しにかりんの席へやってきた。


恵はかりんの中学生の時からの親友の一人で、何でも話し合える昔からの良きかりんの相談相手でもある。


「かりん、これありがとう、助かったわ。プリント貼りまくってたら、のり直ぐになくなってん………」



「ええよ、これぐらい。いつでも、かすよ」



「あんた、第一志望の大学が受かったから。卒業した後、北海道へ行くんやろ?」



「………、そのつもりやけど」



「“そのつもり”って、……かりん、まさか、迷ってるん?!」



「関西の大学も受かってるし、別に関西でもいいかなぁ……、って」



「せっかく、第一志望の大学が合格できたのに何でなん?もう迷っている時間、ないやろう?」



「……うん。何か……関西から急に離れるの、寂しくなってん。仲良い人と直ぐに会われへんようになるんかなと思ったら……」



──北海道へ行ったら、今みたいに家族、友達、直ぐにあわれへんよなぁ。



「私も、かりんがいいひんなったら寂しいで。そやけど……、あんなに北海道の大学頑張って行くねんって言ってたやん。ほんまは、何があったん?」



ちょうどその時、同じクラスの坂内 穂波(さかうち ほなみ)がずっと側で聞き耳を立てていて、かりんの元へ顔色を変えてやってきた。


穂波もかりんの中学生の時からの親友の一人だ。


不機嫌な様子の穂波がかりんの机を両手でドンっと叩いた。


「かりんが北海道の大学、迷ってる本当の理由、私、知ってるから!」


「なに?」
「なに?」


かりんと恵が口を揃えて言った。