「いや、まぁ、今更だよね。」

と私が苦笑いをすると、

「ま、そうなんだろうけどさー。」

と由梨がため息をついた。

由梨がため息をついたのは、きっと颯斗の周りにいる女子達のことだろう。
颯斗に彼女がいないと思っているからか、颯斗に気に入られようと積極的なのだ。

『氷の王子様』と呼ばれている伊藤颯斗は私と付き合っているが、それは学校ではバラしていない。その理由は単純。
バレたら女子達に何をされるか分からないからだ。

だから学校では颯斗と話さない。

「羨ましいとか思わないの?」

「あんまり思わないかなぁ。どちらかというと申し訳ない思いが強い。たまたま家が隣同士になって、そこでたまたま仲良くなってこうなったんだと思うし。」

私と颯斗は家が隣同士の幼馴染ってやつで、今では家族ぐるみで仲良くしている。
でも、もし他の子と隣同士になってたら颯斗はその子と付き合ってたと思う。

「あんたねぇ、そのたまたまがどれだけすごいか分かってる?はぁ、あんたはもうちょっと自覚したほうがいいと思うわ。」

「何を?」

「あの『氷の王子様』にみどりがどれだけ愛されてるかっていう自覚よ。」