「ユルサナイ」

幸せだった空間が突如現れた侵入者によって、打ち砕かれる。


「え?だ、だれ?」
「ミサキ…」

結婚式には似つかわしくない服装に身を包んだ女性は、ツカツカとハイヒール音を響かせながら私を憎悪に満ちた瞳を向けてくる。


「え?…な、何?」
「この人は、返してもらうわよ」
「ま、まてミサキ。お前とはもう…」

私の目の前まで来た女性の手にキラリと光る物が見え、やっと今の状況を理解した。


この女性は、彼の元カノ?
詳しくは分からないけど確か、別れるのに相当手こずったとか言ってた人かな?

まだ、彼の事が忘れられないの?

彼女の瞳はギラギラと、まるで私を獲物でも見るかの様に見て来る。


「や、やめろ!」


グサッーーー

彼の大きな声にハッと我に返った時にはもう、私の胸は赤く染まっていた。


「ゲホッ…」

胸に熱を感じた瞬間、口から血が飛び散る。


「この人と幸せになるのは私なの。アンタじゃないんだよ」

「…あ……」


何かを言い返したかったけど、私はそのまま力尽きた。


今日は私の、結婚式だったの。
幸せな家庭を夢見ていたのよ。



何で、こんな事にーーー