「ちょっと、本当に鬼なんて出るのー?」
「僕のジイチャンが昨日、そう言ったんだから間違いない」
「ふーん、まぁ、こんな間夜中のお寺だったら出てきてもおかしくないよねー」

丑三つ時、寺の前をウロウロする2人の耳に足音が聞こえてきた。


「あ!お母さん達に家を勝手に抜け出した事、バレちゃったかな?怒られるよね」
「うん、ヤバいな。どっかに隠れるか?」
「そうだね!お寺の裏に…」
「お前達、どこに行くんじゃ」
「やべ!ジイチャンの声だ!」

幼なじみの声に振り返るとそこにいたのは…


「…ヒッ!」
「だ、だれだよ…」
「ワシか?ワシはお前のジイチャンじゃよ」

そこにはニタリと笑みを浮かべる鬼がいた。
鬼は楽しげに幼なじみだけを見ている。


「うわぁぁぁぁ」
「いやぁぁぁぁぁぁ」

それは一瞬だった。
鬼が動いたと思った時にはもう、
バキボキと骨が砕ける音が辺り一面に響いていた。


「…孫の味は格別に美味い」

跡形もなく幼なじみを食した鬼は、スルスルと歳のとったお爺さんに変わっていった。

身体中、幼なじみの血が大量に付着している。


「…バ、バケモノ…」
「オヤ、そう言えばまだいたんじゃったな。もう、腹が一杯なんじゃが」
「…ヒッ」

お爺さんが鬼の姿へと変わっていく様子を、腰の抜けた私は必死に地べたを張って後退りしながら見ていた。

「ガァァァ」
「…ァ…」

鬼へと変化したそれは私と目が合った瞬間、私の身体中に痛みと熱を感じた。
そして意識がとぎれるーーー



「まーた神隠しにあった子供がいるんだってよ。今回は2人もなんだと。コワイなぁ」