「結局、また食ってんじゃん」
「…はっ!」

「ネェちゃん、もう氷食うの止めるんじゃなかった?」
「ちょっと食後に一つだけよ」
「…あっそ」

弟はそう言うと、そのまま私の横を通り階段を上がって行った。


「………」

氷を食べる人は鉄分不足だって聞いたのは1週間前。
それから私は氷を食べるのを止めていた。

でも…、
今日は無意識の内に氷を食べていた。

久しぶりに氷を口に入れた時の冷たい感覚。
ガリっとかんだ瞬間、ちょうど氷の裂け目に歯が当たったのかサクッと簡単に砕ける。


快感ーーー

氷には魔力があると思う。


ダメだ。
私はまた、この魔力にやられてしまった。


「…もう一つだけ」

そう言って私はまた、製氷皿に手を伸ばす。


「…ネェちゃん」
「やっぱりムリ!食べる!」

階段を登るフリをして私をジッと隠れて見ていた弟が呆れた顔で私を見ていたが、私の身体は氷を無性に欲していたからもう我慢するのはムリ!

冷たい氷を手に取り、口に放り込む。

「んっ!幸せ〜」