「お母さーん、薬ちょーだーい!」

トントンーーー

お母さんの部屋のドアをノックしても声をかけても返事がない。

おかしいな…
部屋にいるはずなんだけど。

カチャーーー


「お母さーん、入るよー」

ドアをゆっくり開けもう一度、声をかけようとした口がそのまま固まってしまった。

な、何?
ここどこよ?

そこは見慣れたお母さんの部屋ではない、煌びやかな部屋が広がっていた。


「は?へ?な、何?ここはどこ?」
「あーら、あなた来ちゃったの?」
「お、お母さん!ここどこ?」

コロコロと楽しげに笑っていたお母さんが、ゆったりとした動作で立ち上がる。
そして私の前まで歩いてきた。

「フ、フフフ…」
「何よ、お母さん!ここはどこなの!」
「もー、煩い子ねー。…寝ておしまい」

お母さんが手を私の前にかざした瞬間、フッと力が抜けそのまま身体が崩れ落ちた。


「目覚めた時にゆっくり話すわ。今は風邪を治してしまいなさい」

微かに聞こえてきた声が何を言っているのか分からないまま、私の頭を優しく撫でる心地良い感覚を感じ取った時にはもう、意識が遠のいていた。



お母さんに色々と聞きたい事があったのにーーー