湊さんに手を引かれるままついて行くと、日陰にあるベンチに座らされた。

「はぁ〜⋯⋯」

そう言いながら湊さんはしゃがみ込んでしまった。

「み、湊さん⋯⋯?」

やはり私がなにかしてしまったのだろうかと心配していると、繋いだままだった手にぎゅっと力が込められた。

「よかった、無事で⋯⋯」

その言葉に私は湊さんに迷惑をかけてしまったことに気がつく。

「ご、ごめんなさっ」

謝ろうとすると、湊さんに「違う」と言って止められた。

「日南さんは悪くない。ただちょっと変な虫が寄り付きやすいだけで」

寄り付きやすいって言ってもそんなに何回もあったっけ、と思っていると湊さんが私の手を両手で握ってきた。

「⋯⋯日南さん、お願いだから俺の知らないところで危険な目に遭うのだけはやめてな」

危険な目。

そんなことあるのだろうか。

「ピンと来てないな、その顔。⋯⋯例えば、男と二人きりになるとかね」

男と二人きり。それなら今の状況はどうなんだろう。

「⋯⋯今、まさにその状況じゃないですか?」

「俺はいいんだよ。それとも何?日南さんは俺と一緒はいや?」

「そんな訳ないです!」

そう言うと湊さんは「だろ?」と言って、笑った。

「二人きり以外にも、キスされそうになったりとか」

そう言うと、湊さんは顔を近づけてくる。

「こんな風にされたらいやだろ?」

「⋯⋯いやじゃないです」

湊さんは「まさか」という風に驚いた顔をする。

「だって、湊さんだから。いやじゃないです」

私がそう言うと、一瞬静まり返った。

けれどすぐ、湊さんと目が合った。

何とも言えない空気。

よくわからないけれど恥ずかしくて、むず痒い感じ。