私は身支度を済ませ家の鍵を閉めて学校に行く。

いつもと変わらない登校。教室に入ると、これもいつもと変わらない女達の小言。


水無(ミズナシ)、まだ援交やっているんだって」

「汚い女だよな」

「顔が良いからって調子乗り過ぎ」


聞き慣れているが、よくも飽きなでそんなデタラメを話すことができると感心する。

胸元まで伸びた髪は特に何かしているわけではないが、サラサラと艶を出し、顔はそこそこいい方。自分が美人だとは言わないけど不細工でもないと思っている。

だからなのか、そんな私を嫌って身に覚えのない噂を立てている。


私は聞いていない振りをして鞄から教材など机の中に入れていると、私に元気よく挨拶してくる清水(シミズ)七絃(ナツル)が現れた。


(レイ)、おはよう!」

「おはよう」

「ねぇ、聞いてよー。昨日さー」


そう言って長話をする七絃は私の唯一の友達。
ショートの髪は巻かれていて、目がクリクリと可愛らしい顔をしている。


控えめで大人しい私とは正反対で元気があって明るい子。


友達になったキッカケは高校に入ってすぐに、七絃から声をかけてきてくれて、話をしているうちに打ち解け合ったから。

正反対の性格で、こんな私に声をかけてきてくれたことに嬉しくて、今でも七絃には感謝している。ずっと根も葉もない噂が立てられていたのに、七絃は私のことを信じてくれた。



「ちょっと、聞いてるー?」

「聞いてるよ」

「うわ、その反応聞いてなかったな」

「ご、ごめん」


申し訳なさそうに笑って謝る私に、もーっと言って頬を膨らませて怒る仕草をする七絃。


こんなふうに会話ができることに嬉しく思う反面、罪悪感を感じる。

七絃を信じていないわけではない。
でも、自分のことを話すことができない。
誰かを信じで話すことが怖いから。