柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた




「…怜?」


恐る恐ると言ったような声色で私の名前を呼ぶ七絃。私は七絃の心配に大丈夫と答えられない。

もうバレてしまっているのであれば、最悪な事態になりかねない。

彼を怒らせてはいけない。

私は立ち上がりドアを出ようとする。



「ちょっと、待て!」

「離して!!」


私の腕を先輩が掴む。そして、声を荒らげ取り乱す私を見て驚いている。


「早く、早く家に帰らないといけないの!だから離して!……お願い、です…」


唯ならぬ雰囲気で言う私に対して何かがあると皆が思ったことだろう。先輩は静かに何も事情を聞かずに、送ると言って私の腕を掴んだまま離すことはなかった。


後ろから圭哉くんが「七絃ちゃんだっけ?君も送る」と言って2人が後からついてくる。



私達はアジトに来た時と同じ車に乗せられる。



「家は?」


教えることは出来ない。
もう、彼がいるだろうから。


私は○○の公園まででいいと伝えると車は移動をした。

車内は風翼のアジトに行く時よりも暗い空気。こんな雰囲気にさせてしまっているのも私のせい。

分かっているけど、言葉が見つからない。私が行き先を伝えた公園に止まると「ありがとうございました」とお礼を言って走って家まで向かう。


その後を先輩達が車で付けていたとも知らずに……。



公園から走れば5分ともかからないで着く。急いで帰ってくると私の家の前には予想通り彼が壁に凭れ掛かって待っていた。

息を切らした私が来たことに彼が気づき、一言。


「遅い」

「…っ。ご、ごめんなさい」

「……嘘じゃねーみてーだな」

「え?」


ボソッと言った彼の言葉は私には届いていなかった。


「何でもない。それより、10分遅れ。どういう意味か分かるよな?それに俺が目を離した隙にお前は何をしていた?」


それがどういう意味で言われているのか、考えずとも分かった。