柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた




その空気を破ったのは意外にも先輩だった。


「水無、話したいことがあるが、まずこれを返す」


そう言って私の目の前には1つの手帳が渡される。


「ありがとうございます」


受け取ると無くさないようにカバンの中にしまった。
私の大事な手帳。



「あの、中は…」

「見てないから安心してー」


圭哉くんはニコッと笑っていた。

あんなふうに別れたのに笑顔を見せてくれることを心做しか安心した。



「あの、私達はどこに連れていかれるんですか?」


七絃の質問に安心していた心を緊張へと切り替えざるおえなかった。



「僕達のアジトだよ」

「え?風翼の?」


七絃と共に私も驚く。


「そう、風翼のアジト。大丈夫だよ、1番安全だからね」



私は恐怖で震えそうな体をギュッと押し込めるようにして、拳を握る。

それほど長い時間移動をしていないけど、私には旅をしているくらい長く感じ、着いたという風翼のアジトはすごく大きいことに驚いた。

それは七絃も一緒のようで、目を見開いていた。


私達は先輩に促されるように後を着いていく。先輩や圭哉くんに気づいた風翼の人達はバイクを弄っていた手を止めて頭を下げていた。そして、階段を上がってひとつのドアにたどり着き、何の抵抗もなく先輩が開けると部屋の中に2人の男の人が座っていた。


「やっと来たか」

良くも悪くも思ってもいないような返事をするのは、髪が青く染められたツリ目の人。


「…」


もう1人の人は私達を見ても何も言ってこない。



何色にも染められていない黒の髪はすごく綺麗で、左耳のシルバーストーンのピアスが鋭く光る。