柳の木の下で貴方が言葉を拾ってくれた




次の日、七絃に合コンの話は無理だと伝えると、そっかーと少し悲しそうな顔をした後、話してくれてありがとうと笑顔を見せてくれた。

ごめんね、七絃。


悲しそうな顔をさせたくはなかったけど、もう私は先輩と関わりを捨てたいんだ。

合コンの話が無かったことに良かったとホッとしてしまっている自分は、七絃に申し訳ないことをしていると反省している。そして、何事もなく授業を終えて帰ろうとしていると、何やらクラスメイト達が外を見て騒がしい。



「何だろーね?」


七絃もその様子に疑問を抱いている。

私はクラスメイト達が話している会話を盗むように聞く。




「ねぇ、あれってナン高の人達だよね!」

「ちょーイケメンなんだけど!!」

「誰か待ってんのかな?」

「えー、誰々!?」



ナン高って南波高校?


それを聞くと昨日の先輩と圭哉くんの事を思い出してしまう。


「ってか、あの人達って、風翼の幹部じゃない?」

「え、マジで!?」


ドキリと心臓が跳ねる。


ま、まさか、ね。



「風翼って言えば暴走族だよね?ツキ女になんのようなんだろ?」

「…何だろうね」


私は下を向く。

幸い、七絃は窓を見ているクラスメイト達を見ていたので、私が下を向いていることには気づいていないようだ。


「七絃、帰ろ」

「え、あ、うん」

私は席を立ち、クラスメイトに目もくれず教室を出た。


「怜、どうしたの?顔色悪いけど?」

「ちょっと、寝不足みたい」


ハハッと笑ってみせたけど誤魔化せるほど上手い笑い方ではなかったみたいだ。七絃はそれ以上深入りすることはなく黙って私の横を歩く。


そして、校門まで行くと2人の周りを輪で囲むように女達が群がる。


その2人が先輩と圭哉くんだったから尚更会いたくない為に、知られないよう横を通り過ぎようとしたが………、ダメだった。