*帰り道*
 
 雪が積もっていて冬景色だけど、今日は春のように気持ちの良い暖かさ。

 ふたりの空気はすぐに戻り、いつも通りな感じに。

 さっき “結衣も俺の特別 ”なんて言ったけど、もっと良い言葉あったよな……。

 何も考えず勢いだけで言った言葉について考えていた。

 今の状況、付き合ってる? いや、特別って言っただけで、付き合ってないよなぁ。いつもと変わらない……。

「ねぇ、私の話、聞いてる?」

 彼女が頬をふくらませて、怒っている。

「わぁ、ごめん。ぼーっとしてたわ」

「まぁ、いいや。じゃあ、ばいばい! また明日!」

 彼女と離れてしまう道になった。
 俺に背中を向け、彼女は進んでいく。

「待って!」

 気がつくと彼女を呼び止めていた。
 彼女は振り向く。

「あ、あのさぁ……」
「……どうしたの?」
「ううん、なんでもない」
「そっか、じゃあ、またね!」

 そう言った彼女は再び背中を向けた。
 今日、気持ちを伝えないと、ずっと言えないままになりそう。

 ――それは、嫌だ。

「あ、あのさ! 付き合おうか?っていうか、結衣と付き合いたい!」

 彼女は動きをピタリと止め、振り向いた。

「……うん」

 そしてはにかみながら、ゆっくり頷いてくれた。

 ――めちゃくちゃ緊張した。

 さっき、結衣からチョコレートケーキを貰った時、彼女の手が震えていた理由が分かった。今もまだ心臓がすごく速く波打っている。

「結衣の作ってくれたケーキ、一緒に食べよ!」

 どこか、食べれそうな場所を探しながら、彼女と手を繋いだ。

 最後に手を繋いだのはいつだっけ? 

 確か小学二年生の時、一緒に遊んでいたら彼女が転んで怪我をして、その時に結衣の家に連れていった時だったかな? 懐かしさと共に、結衣の手の温かさがひしひしと伝わってきた。

 チョコレートみたいに甘くて、優しい雪がふわふわと降ってきた。
 

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