椅子こん!



ハ、ハ、ハ……

と短い呼吸のゆうな、くしゃみのような声が空港に響く。
入り口付近の広いロビーとは言え、人気があるのに今更のように気が付く。


ハアアアアアーーーーーン!!


うちひしがれる男の絶叫が響き渡った。

ハアーーーーーン!!
ハアアアアアーーーーー!!
ハアアアアアーーーーーン!


取り乱し、頭を抱える。
 グラタンさんはそっと彼の影から自らの手を挙手のように掲げた。
 キムの手に縛られなくなったスキダが彼女の頭上に戻っていくと、彼女の目にはっきりと活力が灯る。
 グラタンさんが男から離れても彼の関心は既にそこにないらしかった。



「──本家が! 本家が悪いんだ!
あの木があれば、スキダの視認も、暴走も、怪物もなくなる! 全てが浄化される! なのに本家が、独り占めしたからだ!
壁を作り、触れなくした!
 本家は俺を受け入れなかった! ずっと遣えて来たのに、邪険に扱った!
あの言い伝えの宝だって俺が研究したのに!
どうせ、また、俺を笑っている! なぜ、俺じゃいけないんだ」

「だから──」

 しばらく遠巻きに見ていたアサヒが、彼になにか言おうと近付いて来たとき、警備の人が集まってくるのを感じ、私たちはあわててその場を去った。





 嫁品評会は前々からあらゆる組織に目をつけられていたらしい。取引を確認した捜査本部はいよいよ事業の差し止めを行うべく動いた。
 学会の工作によって事態がなかなか上層部に上がって来なかったのも対処が遅れた原因のひとつだ。田中や岡崎らが居なくなってから、次々と不正や問題が露になった。


 そして今回、逮捕された田中が供述した中に、隔離政策によって秘密の宝石の純度を高めるためと聞いている、というのがあったのも大きかった。
  近日中に取引が行われると踏んで、クラスターに紛れ込み監視したり、通話記録などをとっていたのだ。
 彼らはやがて、義手の男がどこかに出掛けた後──
 城の中で金の入った袋を貰うのを待機していた幹部たちを、突撃し確保した。