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「現会長らの、追い込まれれば追い込まれるほど命令したい、人のせいにしたい、暴走行為をやりたくてしかたがないという気持ちは筋金入りだ。それをとめられるのは、死刑宣告を受けるような痛い、苦しいダメージを受けること」
「だが、とうとう、それが仇となった。犬がこちらを嗅ぎつけている。団体行動には向かない性質だったんだ、あの子は」
超恋愛時代の大戦中、キムから逃げる人類は汚染されていない場所に根付いた大樹を囲む壁を破壊する作戦を行った。
その壁というのは大樹のための防壁で、その近くにあった大樹の街ごとに精神汚染を食い止めるために築かれていた壁。
しかし――自分たちを恐れ、自分たちの進行を防ぐためのものであると思い上がった人間たちはオアシスを求め、それを破壊した。
大樹の汚染により地盤が保てなくなった土地は震災の引き金を引いた。
その後に蔓延するようになったのが凶悪な概念体。
地中に埋められていた謎の『手』は、学会が持ち帰った。その『手』は後にキムの残した手と呼ばれ、あらゆるスキダ系概念体の攻撃が効かない唯一の物質として、国家規模の機密になっていった……
「私たちはいつも言われてきた、完成されていない、と」
「完成されていない学会、か」
「それはそうだ、学会は今や私欲に走り基盤すら不安定なのだから。そもそも刹那的に戦い続けるしか術のない我々には、世界に細かい伏線を貼ることなど出来ないが――他人を使う事だけは出来る」
「なぁに。『完成だけは、している』ではないか。出来はともかく、な」
「そのせいで、取引が中途半端に遅れているのではないかね?」
「計画を完成させる、そのための生贄、なんとも陳腐だな」
「回収されていない伏線がある――そう、言っておくことこそが、ロマンなんですよ。でも、完成しただけ。そもそも我々の計画はあの『昔話』から始まったのだから」
「そう。結局はこの結末すら我々が選んだんだ。嫌なら離れれば? 腹括れるの? と、いう自問自答を繰り返してきたものの、この欲や希望を貫くには仕方がないと、自分に言い聞かせていくしかない。何が正解かは分からないしな、結局」
8番テーブルに、カタログが広げられる。
一見するとメニュー表のようだが、並ぶのは女の写真、そして『推定される』色の宝石の写真だ。
此処では今、実質の奴隷商――取引として『嫁品評会』に出品される商品の最終確認が行われていた。
「良い女が入った。滅多にとれない、『水色』だ」
義手の男が、ニヤリとわらった。彼の手には、薄い水色の魚型のクリスタルが握られている。
「スキダだけでもこの透明度だ――純度が高いとすぐ壊れるから、慎重に、『つがい』に引き渡して育てなくてはならんが、何億、何千という大金に変わるだろう」
「これって、学会に反発してた、グラタンじゃないですか」
「恋愛総合化に反発するということは、そもそも濁りが少ないんだ。心のメラニン色素のようなものだな。それが足りていないから、火傷を起こす。『あの女』のときもそうだった。 純度が高い。それは必然。
あの女のときには水色では無いものの、滅多に見られない美しい宝石に生まれ変わり、我々の何億という富をもたらしてくれた」
「今回も……そうだといいですな」
「ですな」



