怪しいお店と取引
「『スキダの宝石』は、『秘密の宝石』とは価値が変わってくる」
俺たちは出かけるまで、連日策を練っていたのだが、何よりもまず、オージャンが言ったのはその言葉だった。
「スキダも……あるのか。あれって、同じじゃ」
「明確には、殺して全身を煮詰めて作ったのが秘密の宝石だ。キムの手は、スキダを吸収出来るらしいが、殺人という話は表立っては聞かない。代わりに、あの風俗店付近で自殺する人が多いみたいだが……どういう意味かわかるか」
「意味って……え……」
「殺して全身を奪っていないものと、ただスキダだけで作られたもの。これが両者の差だ。重みが、価値が違う。俺たちにはどちらもただの石ころにしか見えんがな」
「つまり、肉体はまだ残っていてスキダだけが無くなった身体と、どちらも無くした身体ということか」
スキダだけが抜き取られても、何日かは生きている望みがあった。
でも、それは、魂を不安定にする。見知らぬ土地で、スキダを抜き取られるというのは、認識、精神的指針がおかしくなり、ほとんど廃人になってしまう。視力、聴力、味覚、あらゆる感覚に作用することもあるらしい。
そんな状態になるのだから、その後の自殺が続いても不思議ではなかった。実質は殺人じゃないか。
「付け入る隙があるとするなら、そこだろう。お前の彼女を、引き合いに出せば、交渉出来る可能性がある」
「……さらっと言いにくいことを言ってくるな」
「どうする? 僕は、お前が戻っても、何も言わん。そもそもが危ない場所だからな」
「やるよ」
俺は迷わなかった。オージャンは意外そうな声を上げる。
「決断が早いな、昔のお前ならもう少し考えそうなものだが」
「俺たちは、いろんなものを奪ってきた。奪って、壊して、迫害を助長し続けてきたんだ。だから……
――今度こそ、逃げない」
「そうか」
送話口の向こうから、ふふっと、なんだか嬉しそうな笑いが聞こえる。
「それに、この石をべつにあいつに渡すわけじゃない」
「お前は、変わったな」
気になることもあった。
俺に、どうして、ヨウから、あの石が引き出せたのか。
キムの手も無いのに……
とにかく。これはきっと、彼女が残した希望。
それはまるで、俺の行く先を導いているようだ。そう、思えてしまった。
――助けてあげて
「……俺だって変わる」
「『スキダの宝石』は、『秘密の宝石』とは価値が変わってくる」
俺たちは出かけるまで、連日策を練っていたのだが、何よりもまず、オージャンが言ったのはその言葉だった。
「スキダも……あるのか。あれって、同じじゃ」
「明確には、殺して全身を煮詰めて作ったのが秘密の宝石だ。キムの手は、スキダを吸収出来るらしいが、殺人という話は表立っては聞かない。代わりに、あの風俗店付近で自殺する人が多いみたいだが……どういう意味かわかるか」
「意味って……え……」
「殺して全身を奪っていないものと、ただスキダだけで作られたもの。これが両者の差だ。重みが、価値が違う。俺たちにはどちらもただの石ころにしか見えんがな」
「つまり、肉体はまだ残っていてスキダだけが無くなった身体と、どちらも無くした身体ということか」
スキダだけが抜き取られても、何日かは生きている望みがあった。
でも、それは、魂を不安定にする。見知らぬ土地で、スキダを抜き取られるというのは、認識、精神的指針がおかしくなり、ほとんど廃人になってしまう。視力、聴力、味覚、あらゆる感覚に作用することもあるらしい。
そんな状態になるのだから、その後の自殺が続いても不思議ではなかった。実質は殺人じゃないか。
「付け入る隙があるとするなら、そこだろう。お前の彼女を、引き合いに出せば、交渉出来る可能性がある」
「……さらっと言いにくいことを言ってくるな」
「どうする? 僕は、お前が戻っても、何も言わん。そもそもが危ない場所だからな」
「やるよ」
俺は迷わなかった。オージャンは意外そうな声を上げる。
「決断が早いな、昔のお前ならもう少し考えそうなものだが」
「俺たちは、いろんなものを奪ってきた。奪って、壊して、迫害を助長し続けてきたんだ。だから……
――今度こそ、逃げない」
「そうか」
送話口の向こうから、ふふっと、なんだか嬉しそうな笑いが聞こえる。
「それに、この石をべつにあいつに渡すわけじゃない」
「お前は、変わったな」
気になることもあった。
俺に、どうして、ヨウから、あの石が引き出せたのか。
キムの手も無いのに……
とにかく。これはきっと、彼女が残した希望。
それはまるで、俺の行く先を導いているようだ。そう、思えてしまった。
――助けてあげて
「……俺だって変わる」



