ガチャガチャと鍵を開ける音がした。
「そこの女ども、仕事だ」
ガタイの良い覆面の男が、乱暴に告げて鍵を開ける。少女は慌てて泣き止み、グラタンも覚悟をした。
結婚式場の地下からそのまま通路を歩いていくと、やがて繋がった地下通路から風俗店に通じる。地上での警察の取り締まりなどが強化されているためこのようなトンネルからの行き来は役立つ。
何よりも、ボロボロの姿で見知らぬ町を歩かなくて良いことは彼女たちにも悪いことばかりではなかった。
仕事を終えた後、彼女たちはまたボロボロの姿になって寝床に戻る。道中に見知らぬ人や見知らぬ町を見ていては、憎しみが募るだけだ。
何より、脱出しにくくしているのだろうけれど。
そんなトンネルを潜り、ネオンの煌めく怪しい店内、という地上が見えてくる。
そこは控え室とされており、スタッフしか近付くことのない部屋だった。
「いつみてもキラキラしてるなあ」
少女が目を輝かせる。
彼女も苦笑しながら後に続く。先頭に居る男が売れ残りをじろっと見たがやがてスパンコールの目立つドレスを着た派手な女に二人を引き渡した。
彼女は夜会向けの派手な髪をかきあげながら見下すような笑みを浮かべる。
「はい、こんにちは、少し待ってな」
挨拶をされ、二人ともおずおずと挨拶するも、それを無視しながら壁の内線から電話をかけた。
「バンバン! 奴ら来たよ。あぁ、あぁ、そうだそうだ、バンバンがこの前に見せてくれた水色の……うんうんうん、それそれ」
しばらく立っているうちに、重みのある足音とともに男が現れた。
「っ────」
強い衝撃が彼女たちを揺さぶる。
「あ……あ……あぁ……」
彼は、義手にスキダを持っている。
少女がうっとりと腕を伸ばした。
「私の、スキダ……」
ふらふらと密に引き寄せられるように男に向かっていく。彼はサングラスをかけた顔でニコッと笑う。
「おやおや、モテる男は辛いな」
グラタンは警戒しながら彼を見た。
「お前も意地を張るな」
義手から綺麗な水色の光が溢れると、彼女の胸が痛くなって、勝手に涙がこぼれてくる。その輝きに目をそらすことが出来ない。スキダだ。
あれは自分が奪われたスキダだ。
本能が喜んでしまう。
「グラタン。お前のスキダは優秀だよ。
せめてもの礼にお前を品評会に出してやる」
彼は嬉しそうに笑って、義手を見せつけた。スキダで光輝くキムの手が彼女に伸ばされる。
頭が、頭が……ぼーっとする…………
少女が自分のスキダの輝きを放つもう片方の手に向かって吸い寄せられる。
「あたし……あたしは……? あたしは」
意識が安定しない頭では少女がどうなったのかわからないまま、グラタンは男に連れられて部屋の奥へと向かって行く。
ぼーっとした頭が、先程の女に似た顔に見覚えがあったなとふと思った。
なんだっけ。
なんだっけ。
サングラス。
義手。
キムの手。
「あ……」
昔、活動中に見た、恋愛総合化学会の幹部だ──



