椅子こん!

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「行くのさ、北国」
私と女の子はええーっ!と同時に驚いた。

「確か北国に、『闇商人オンリーのやかた』がある。普通に行くだけじゃ危険だが、学会についていけば……」

「でっ、でも! 怖すぎるよ、洗脳されたりしたら戻って来れないかもしれないじゃない」

「っていうか何そのやかた」
女の子が冷静につっこむ。

「盗品を売りさばくやかただ。嫁品評会に出入りする盗賊、サイコがよく訪れる。
サイコの居る所に、嫁品評会の情報もあるはず」






 今、44街のある研究所、研究員たちの間では、スキダの生成環境や健康的なスキダの発達以外の要因とは別に、生物には異性や同性、その他対象を対象とする為の識別、選択する為のみの能力が備わっているという仮説がたつのではという報告が相次いでいた。

 フェロモン、相貌認識力、空間把握力など多岐に渡るものであり、簡単にいうならば、何を持って相手を認識するか。
 地上に住んでいたとされ今は深海に住む44コイも、普通のコイとは異なり、ひげに触れた電波からしか相手を認識しないため、地上種とは交尾を行わないという。
相手を認めるまでに、外的な、選択能力がスキダの誕生以前に、まず先に存在している。
人間でもまた、スキダが通常と異なるものが居る。彼らは通常のシチュエーションにも通常の相手にも興味を示さない。
まるで深海の44コイだ。

──スキダは本当にその名前通りの存在なのか?
怪物化の鍵がここにあるような気がする。

 会長にあった翌日の朝から、ずっと「眼鏡」はしばらくスキダを機械にセットしたまま見つめ続ける重大な作業をしていたのだが……昼間妙な胸騒ぎを抱えて、一旦研究所の休憩室に向かう。
 携帯アプリでなにか癒されるゲームでも探そうとしていると、着信アイコンが点滅した。

「はい……44街恋愛研究所……アサヒ!」

「久しぶりだな、眼鏡」

アサヒは観察屋をしている旧友で、たまに話をする仲だった。今もあちこちの空を飛び回っているはずだ。
ちょっと懐かしくて嬉しい。
「どうしたんだ、急に?」


「眼鏡、前に言ってたけど、スキダの変異を探してるんだろ、もしかしたら手に入るかもしれない」

「──ほほう、取引か。何が望みだ?」

「まあまず聞け、実は今度北国に行こうと思ってるんだ、マカロニのことを知っていそうなやつが居る。北国にはハクナや学会員も行くらしい」
「──まだ、あきらめて無かったか。
そうみたいだな、いつものボランティアだろう?」
「訳があって、今は俺はハクナの……移動ルートを知らない。どうせ懇意にしている児童養護施設辺りをめぐるだろうが、万全を期したい」
「ルートの確保か……わかった、考えておこう……スキダの生体調査と称することも出来るからな」
「眼鏡っ!」
はしゃぐ声。
本当に、変わらない……
マカロニが居なくなった頃から、ずっと


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