椅子こん!

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「確かにラブレターテロのとき、あの魚の暴走により、狙われた数名の生徒が亡くなりましたが『秘密の宝石』によって命からがら助かった者もいます。
近年では『秘密の宝石』と運命のつがいを同時に使うことで44街はバランスを保ってきましたが。正直言うとそろそろ、悪魔を、『秘密の宝石』にするだけでは供給が追い付かない。そこで、あの子を新しく対魔用にしたいのです。そして永遠的に学会の機能を併設すれば街は安泰です!」

 近年その怪物自体が『秘密の宝石』から生まれていたことがわかってきた。
男はそれを言おうとしたが、言わなかった。学会を支えているのはその怪物だからだ。
「めぐめぐさんを、新しく、接触禁止にする、許可がどうしても必要なんです!」

会長が頭を下げる。
「ふふ。『秘密の宝石』の配布の効果はヨウさんやギョウザさんたちがもたらした恵み──前会長にも成し得なかった、怪物化を防ぐ魔法のお守り、おおかた、そのヨウさんが、新たに選んだ素材ですか」

 機能を併設すれば安泰、というのは会長は初耳だったが、それも確かにそうかもしれない。

「悪魔だけでも充分に思念体生物の餌食になってくれている。おかげで、ここ十年以上は、まだ完全にキムが目覚めていないのです。これからも、併設で行けるでしょう!」

「書き換え、その、うまいこと、行くように、ちょっとお願いしてみますか……」

市長は思案してみた。悪くはない案だった。それにバックにはギョウザさんたちが居る。いつスクープを書かれるかわかったものじゃない。市長の魚頭はただでさえ差別や偏見に晒されやすいのだ。

 いい返事が貰えたので、会長は「ありがとうございます!」と感謝をのべながらも、一方で何かに違和感を覚えていた。
『秘密の宝石』が本当に怪物を避けているなら、あの悪魔の家はなんなのか、と。
そして──
キムは本当に、目覚めていないのか?