椅子こん!




運営
 学会では、ヨウ以外の幹部たちによる話し合いが行われていた。
 きっかけは44街の通行止めは学会からみという報告が広報などを任されている斎藤に来たことからだ。
通行止めは『2世』←重要
であるヨウが取り仕切る区画であるため
彼を学会の部屋に探しに言ったクロネコ。
 やがてクロネコはヨウが地下から兵器を持ち出していたことを発見して報告し、通行止めもそれ由来と判断された。
それになにより『あの放送』からの緊急召集。データはあかでみあ社に送られていることや本人から連絡があったことが内部から連絡が来ていよいよ彼の容疑が確定し始める。
 ヨウはハクナともよく接触している。局などのスポンサーを牛耳るギョウザさんとも通じていた。
 観察屋を通じて『悪魔の子』に会いたいと歪んだ熱意を向けていたこともクロネコは知っている。目的は彼女だろう。


「しお、本当は、ハクナ側が何かしようとしてるのやめさせたいんですよ。
ハクナ側はどうにか前向きな発言で自分を鼓舞しているようですが──
限りなく黒に近いグレーだったものが仕様と言うにも少々厳しくなってきています。市民も薄々勘付いたりし始めましたし」

円卓の12時の方向の『しお』婦人が重々しく口を開くと、時計回りにすぐ横の斎藤が大袈裟な身ぶり手振りで言う。

「大体、彼の独断と独り善がりの勘違いで勝手に暴走した結果だ。いつまで通行止めにする?
市民も不審がっている、市長側、44街側からの問い合わせも来ているんだ……このまま行くと、学会も疑われ兼ねない」

「……しかし、癪だな、イタズラ電話や、
イタズラ投稿をことごとく無視し始めた……
皮肉なものだよ。俺たちさえ居なければ、居ないと考えればあんなに穏やかに楽しそうにするらしい──迫害されていたくせに、あんな穏やかな表情には、それほどに意味がある」

さらに横の元観察屋の老人──相談役の岡崎が呟く。手にしているのは今度家に送りつける予定だった盗撮写真だ。
良いことがあったからではない、それほどに哀しいから人はこれ程穏やかに笑うのだと、長年の経験上察していたので、ただ胸が痛んだのも一瞬、都合よく元気になったらしいなと笑ってやった。
自殺に追い込む仕事、を無視されるなんて長年のプライドが許さない。
既に怒りに拳が震えている。

「まあ、証拠がないとか言って逃げまわってるんだから、だったら存在自体が居ないみたいなもんでしょ、そんなちゃらんぽらんなの、じゃあお前らも居ないなになるよ」

 そのまま、消えてくれた方が幸せと思うかもね。とさらにさらに横のクロネコは愉快そうににゃあにゃあ笑った。
しお、は「まあ、端末があれば地のはてまでストーカーして脅迫余裕ですから……」とこぼす。自分たちも脅迫される立場になるかもしれない恐怖から、ハクナに逆らうものは居なかった。
 端末会社はほとんど『キムチ社』の利益分配にによって不正ログインを承認している。これは民にはこっそり黙っているが、勝手にログインし放題という仕様なのだ。

「まあ、何も案ずるな、我々には政治がある──学会がある。少なくとも今は、44街の支配者だ」

岡崎老人が言ったとき、ちょうど田中市長の番号から電話がかかってきた。
岡崎は壁につけられた受話器をとる。
「はい──田中、さん」

《もしもし、あの放送のせいで、接触禁止令がうまく出せないかもしれません。一応市民も聞いて居ましたし、証人が沢山居ます、もしかしたら、学会とキムの手の繋がりが、悪魔のことが勘づかれるかもしれない》
 そうしたら、市長の立場も危うい、ということのようだ。せっかく会長らがじきじきに交渉に行ったというのに──
まさかの事態が起きてしまった。

「せつは? そのためのせつでしょう?」 
クロネコが受話器を持ったまま首をかしげる。
「ひらめいた!」
しおは名案とばかりに叫んだ。彼女が学会に入ったのも、昔大病を患ったときに治療費などですがった対価だ、恩人である学会の汚名は心苦しい。悪魔、の迫害がバレてしまえば、民からの非難は免れられない。

何より、テロを起こしたかつての宗教の名残──『2世』が居る。


「そ、そうだ、アーチが取り乱したということにしてしまおう! あれはアーチがやったことにしてしまおう! ねっ、そうしたらまた使える、まだまだ閉じ込めておけます! 端末もあるし、観察屋も常に張り付いてるんだし」

「声帯模写かあ……時間くらいは稼げるかもしれないな」
クロネコはなるほど、と言った。
「近い声優を雇う手もありますが、少しでも市民の目を逸らさないと」
斎藤が焦りながら言う。クロネコは受話器の向こうに苦しい言い訳をした。

「姿は見せていない、見せたところで本物か自体市民には判断がつかない、放送くらいはどうにかなるかもしれないです、
この為の代理、引き続き、岡崎やせつがごまかすので──接触禁止をすすめるのに挑戦お願いします」

《わかりました、接触禁止令の許可に再び挑戦します、では、多少不審がられても、そのうち記憶はどうにかなることに賭けてみましょう》

 ふう、と疲れたように通話を終えるとクロネコは「まったく、ヨウのせいで」とぼやいた。ひとまずごまかす目処は立った。
問題は、彼女らが『椅子さん』なるものを人間以上に好きかどうかだが……
 とりあえずの作戦はこのやってます感の演出、中小企業の買収などだ。
 ギョウザさんが命をかけてやってきたドライブ、何年間もルーティンを踏んでやっと得たデータ、やっとつかんだ場所選択、思案ポイントがすべてなし崩し的にゴチャゴチャ~~なかったコトになりまた1からのルーティン作りなんて、とんでもない。
 時間さえ稼げば勝てる、時間さえあれば互角、そう信じていた。
 外から来た人間はすかさず、こう思うだろう。

 彼らは何と戦い、何から勝とうとしているのか。
 市民に脅迫やパワハラで勝ったからといって、それが社会的にはどんな意味を持つのか。
ますます、不気味で恐ろしいと知れ渡ることに拍車がかかるだけなのに……



誰かがボソッと呟く。
「『秘密の宝石』は永遠に学会の手中にある……」


 彼らは、自分たちの立場を深くは考えないようにしている。
今なお続けている通行止めを誤魔化すこと、あの44街に響き渡った放送を誤魔化すこと、悪魔の友人を誤魔化すこと、市民を巻き込んでいる以上はそれは完全には不可能に近い。

 前向きな彼らが作戦の次に真っ先に考えるのは、
「作戦はうまくいくとして、
誤魔化すだけでは、怪しまれる、
訴えられそうなときに、土日などをまたぎ何度も迫害をやってしまったら…アウトだ……最低でも把握して初めての土日で結論だして解決してないと世間さまから、反感を買うだろうし……」ということくらいだった。