撮影した後そのまま会話を始めてしまった彼女を見て、「観察さん」は考えていた。
(あいつ、まさか本当に──話してるのか?)
突然降ってきた謎の椅子。
どこから来た椅子かわからないが……
彼女には何が見えるんだろう。
聞いたことは無いが、無意識に何らかの対話能力を────────いや。
ただの変人かもしれないし。
叩かれた頬と、心がずきっと痛んだ。
こんな風に怒られたのはいつ以来だろう。
考え込んでいるとふと女の子が、歩いてきて、自分の腕を引いた。
「観察さんは、ママのことも、ずっと、観察してたの?」
「え…………」
「恋愛きせい、ってので、恋愛以外の情報は外に出ない。どうして、ママのこと、撃ったの?」
椅子と話している彼女は椅子に夢中でこちらに気付いていない。
女の子はこのときを待っていて、聞いてきたらしい。
「ママのこと、密告したの?」
まっすぐな目をしている。
けれどなんだか、どこか、吸い込まれそうなよどんだ目だった。



