「俺のスキダは────あいつと共にある。だから、発現しない」
「どういうこと?」
「誘拐、されたんだ……行方不明だが、犯人はわかる」
「誰なの?」
私が聞くとアサヒは少し悲しそうに答えた。
「恋愛総合化学会」
驚き、はしなかった。
他の人もそうだったのかもしれない。
「まだ、ハクナの活動をそんなに力入れてなかった頃に、嫁市場って闇市場が出回ってて、それがハクナが隣国と手を組んでるってずっと言われてた」
カグヤが真剣な顔つきになる。
それにしても目から鱗が落ちる。スキダ、発現しない要因は、相手が行方不明ということ。好きな相手の存在がわからない場合に、うまく現れないことがあるだなんて。
「誘拐に、手を回してたってこと?」カグヤが聞く。
学会員が、とは彼女は言わなかった。
「なんで、関係あるみたいに言うのよ」
「彼女は、44街に、突如恋愛総合化学会みたいなのが政治のバックにつく前から、強制恋愛に、反対していたんだ──
そして、対外的な要因で恋愛的判断に狂いや乱れが生じる、今でいう恋愛性ショックが、
病気である可能性について論文を発表していた。
やつらが動く動機は充分あった」
「私の、病気だ……」
女の子が、目を丸くする。
「その人って」
「マカロニって名前だったかな」
女の子の瞳から、雫がぽたぽたとこぼれた。
「お──おかあさ、ん……おかあさん……」
「おかあさん、マカロニさんなの?」
カグヤが聞くと、女の子は首を横にふる。昔っていってたから確かに時系列があわない。
「でも──わかる……おかあさんは、たぶん、そこにいる……」
あの日、爆発した家の瓦礫の下から、彼女の家族は見つからなかった。だけど彼女は直感したのだろう。彼女の母親も活動家で、同じ病気の話をしていて、ハクナに目を付けられていたのだから。
爆破された家、さらには観察屋があそこまで執拗に、私の家を見張り、探り続けていることも含めて、そこまでするハクナに可能性が充分あることを感じ取っている。
「なんで? その論文がなぜ狙われるの」
カグヤが首を傾げる。
「恋愛総合化学会が、
恋愛を感情論だけで謳っているからだ」



