椅子こん!

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──孤独は、悪か?

ひとりは、嫌か?


──孤独は、素晴らしい。

しゃがみこみ、踞る。気分が、悪い……
そうしていると、ますます、孤独を感じてしまう。いつも、そばには必ず誰かが居たからか少し目を閉じても不安でたまらない。
孤独が悪かなんてわからない。
でも、もう嫌だ。
自分、のように孤独な悪魔を、自分、のものしてしまえば、きっと満たされるような気がする。
気がするのに、胸の奥が、ざわつく。
アサヒ、それから、横にいたこども。
まるで嘲笑うみたいに、悪魔のそばに現れるようになった人たちの出現に、うまく、穏やかになれない。

「ううん、悪魔、は……私だけのもの……私だけの、私にふさわしい! きっと誰より優秀、誰よりも素晴らしいわ……だからこそ、私が、成り代わるんだ」

改めて言い聞かせる。大丈夫、大丈夫。
私は、あの故郷の人たちみたいに、新しい皮をかぶるんだ。新しい私になるんだ。
そして、貧しい生活から抜け出してみせる。悪魔もきっとそのうち、なんとか仲間に──

「さっきから、なに叫んでるの。重い女。
平等に好意を享受すること、恋愛総合化システムの意味しているもの、それに、あなたは相応しくない」

 幻聴、ではなく、すぐ後ろから聞こえた声にぎょっとする。
せつにこんな口を聞く人物は限られている。
「万本屋北香……!?」

 近くに停車した車の窓から顔を覗かせた人物は、せつもよく知る親しい友人だった。過去、小さいときからよくトオイと呼んで慕い、世話をしてくれていた。

「久しぶりだね」

「久しぶり。どういう意味?」

「人から聞いたんだけど、あなたたちが昔活動していた宗教団体──いまは新しいやり方で信者を増やして、過去の遺物は消そうとしているらしいね」

「何の話ですかぁ? そんなのやってたかな?」

「……悪魔、も、そのひとつなの?」

「なんの話ですかぁ」
せつは、いつものように気丈に笑って見せた。大抵のことはヘラヘラ笑って受け流す素振りを見せれば、こいつは聞く気がないと話を短くしてくれたりする。

「前からちょっと疑問に思っていたの。44街の資料を調べても、学会が元々信仰していたのは悪魔じゃない、神様だった。悪魔、なんて話が出始めたのはつい最近のこと。あなたが悪魔を呼ぶのと関係ある?」

万本屋は引き下がらなかった。
依然としてせつから目を逸らさない。

「え、ちょっとなにいってるかわかんない。いや、うちも、大変だから。悪魔が居るなら私──もういいかなって」

「スポンサー関係の番組が、悪魔を揶揄する内容ばかりなのも、あなたたちが流れてきてから、そうじゃない?」

 自分を世話をしていた人物から、そんな話が出るなんて思わなくて狼狽える。


「────っ」

万本屋の車はやがて、黙ったまま答えられないせつを置いて、そのまま市庁舎の方へと向かって行った。



4/10AM1:40