観察屋の指揮ですらもヨウの身勝手な行動は想定外だった。けれど、それは何の言い訳にもならない。だから焦っていた。
そもそもにおいて接触禁止令を守らせるべく暗躍している『観察屋』自身が、知らなかったなどとのたまうことが、不信感を煽りこそすれ、今更希望的な意味を持つはずも無いからだ。
──だが、彼女はなぜ此処に。
首から血を流している。
攻撃命令は出していないし、抵抗のない傷口を見るに、おそらく自分、で判断したのだろうと思った。
滅多なことがない限り全ての対応をせつや役場が勝手に行い、会話や関わりを許されない彼女が自身の判断のみで独断する以外にないはずだ。
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昼──市庁舎に『交渉』に赴くつもりだった男は、それより先に、市庁舎付近で閉ざされた空間を発見した。
「なんだ、こいつは、こんな事態は俺の計画にないが」
「いかにも無能な台詞を吐かないで。いじめたけど泣くとは思わなかったとか言うんですか?」
会長は思わず舌打ちする。
「それはそうだが……」
何かに怯えるロボット。道に座り込む少女。その近くには娘がいる。ようやく見つけた倒すべき敵。しかし、もはや多くの時間は残されていないようである。
「……兵器……あの機密が、なぜ」
ナイトメア型再現兵器。その開発には呪いの研究、スキダの研究のための意味がある。しかし、実戦に使う計画はとっくの昔に中止したと聞いていた。
男は通行止めの看板や布を無視して場に立ち入ると、そっと、少女の傍らに立ち、近くに手を翳した。
(やはり彼女ら、自身の肉体から今、浮かび上がるようなスキダを感じない。どこかに、飛ばしているのか……)
この状況は、その【兵器】が引き起こしたものとしか考えられない。昔聞いていた話からしても、その【兵器】はロボットの形にされているという噂はあったような気がする。
(いったい誰が? 観察屋からはそんな情報は来ていないが……)
その【兵器】は過去にかなり多くのスキダを破壊しており、機密として地下施設に封印されていた。
機密に触れられるものでなければ、兵器を持ち出すことはあり得ない。周りに銃器を使用した痕跡はなく、使用されたのは刃を持つ武器。さすがに銃器の使用許可を取るまではいかなかったらしい。
(まさか、あの男……)
その時だった。
遠くから何かが爆発した音が鳴り響く。
「なんだ?」
自分たちの知らない所で何かが起こり始めている。



