ふふ……ふふふ。
暗い闇のなか、ヨウはモニターを眺めながら笑っていた。
44街は今や彼らが支配している。
「44街の市民さんたちは皆、私の圧力によって私だけしか見る事が出来なくなったよ、キム」
相手の意識を強引に操ることで洗脳が効果を発揮する。 思考の強制停止。
圧力によって強制的に『姫』いや『悪魔』やその周囲を思考停止に陥らせる、言わば行動不能。
「私もね、あの大戦から、手段を選んで居られなかったんだよ」
街には手のひらの賄賂やらなんやらを見せる事で、すぐに手には入るものばかり。
いくらあの悪魔の血筋だって流石にひとたまりも無いだろう。
「キム…………」
ヨウは暗い部屋のなか、ドアに背を向け、何かに向かって語りかけるようにしてニヤニヤ笑っていた。
モニターには、先日の悪魔の家の様子が映されている。
「椅子さん起きて!!!』
クククッ。
彼にはどんな場面も娯楽に過ぎない。
楽しくて笑ってしまって大変だ。
盛大に脳内に小躍りする。
そうか椅子さんでも椅子で無くなれば寝るんだ!喜んでいると誰かが壁の向こうから怒鳴ってきた。
「ボリューム下げて見られないの?
人が折角悪魔の能力を把握しようと構えている時にぃ! ……ただ、勝手に能力を喋ってくれたのは助かるぅ!」
音をたてて彼の真っ暗な部屋のドアが開き、紫の髪と眼鏡をした男装女が現れた。
「あれ? ヨウ。この家に来てるやつ、キムじゃん……!!!
悪魔はよく生きてるね、普通ならこれで一撃なんだけど」
「ブン、うるさい、静かに観てて」
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××年前。
映像、音声技術の発展によって、あらゆるメディア分野が不景気の侵攻を受けずに急激な発展を遂げると同時期、束の間の発展、経済成長を嘲笑うかのように44街の人類を怪物が脅かし、各地に鎮められていたキムが目覚める。
実はこの経済成長の裏では、日々激しくなるメディア間の争いに勝とうとあらゆる禁忌を恐れず侵した者が居た。
それを押し留めようとしている恋愛総合化学会がまさかその禁忌そのものを『吐くな』と、隠す役目も同時に担っているとは、誰も思わなかっただろう。
ブン、と言われた男装女子は頬を膨らませながらいーだ!
と挑発のしぐさをする。
「そういや、この映像、誰が観察担当したんだろう」
ヨウは気にも止めずに呟く。
「あぁー、まったく、映像だけではわからないよ。もどかしい。
このキムの生の状況が知りたい。話が聞きたい。ギョウザさんが、アサヒは辞めたって、言ってたな……そうだ、コリゴリを」
「コリゴリも辞めたらしいよっ」
「えっ、あのコリゴリが、私と境遇が近いお友達だったのにぃ……パパーン!」
(2021:2/271:46加筆)



