椅子こん!

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昨晩はいろいろとあったが、万本屋北香は無事にあの三人を誘きだすことに成功した。

 ずっと考えていたこと。
あの日、私を睨み付けて苦しそうに名前を呼んだ彼女が頭から離れない。
《彼女》に、ちゃんと会いたかった。
仲直りして今までの誤解を解いておきたかった。
恋愛総合化は素晴らしいことでもあって、私たちのためなんだよ、と早く伝えたかった。
仲直りしよう。会長は少し気になりはするけど、学会は世界の幸せをいつか必ず築いてくれるはず。
恋愛が嫌いな人こそ、恋愛総合化を目指す学会に、入信してもらいたい。

──そうすれば、わかるだろう。
一連のことは、本当は誰のせいでもないこと。
私たちは誰も悪くない。
 確かに最近はちょっと、何か、間違えているけれど、ひとつ確かなこと、学会だって当初の志には悪気は無いだろう、と信じてもいる。
 だから私は、彼女に会う口実を作った。恋愛総合化を一緒に目指したい。

 ハクナの工作員として数日前から、ネットにめぐめぐのことを書いたり、彼女たちの恋愛狩り活動中、サポーターのふりをした工作員を街に忍ばせ、めぐめぐの盗撮写真入りチラシを手渡していた。
 そしてあの日、良いタイミングで内部の人間である《ヨウさん》までもが、めぐめぐを笑い者にして作った『本』の発売発表をした。
何事もタイミングだ。
ネットの記事を慌てて拒否する彼女に、重ねてヨウさんが本を出す邪魔をすれば訴えるという連絡を入れ、リアルからもネットワークからもとどめをさせば、もう戦局はこっちのもの。

ハクナの一人、そして作家である『ヨウさん』が、メグメグの抗議や活動を快く思ってないのは知っている。めぐめぐとつるんでいる『彼女』たちも
やがて姿を見せるのは必然的な流れ。


うまくいったその翌日、和解のために彼女、と話していると、目の前で役場に向かっていく車を見た。
 44街の中心部にある都市の市長が44街の権力を握っていることや恋愛総合化学会と深い繋がりを持ち、当選していることは北香も知っていた。
 その市庁舎に呼ばれるのだから、『特別措置』に新たに《めぐめぐ》が追加されることは想像にかたくない。
それだけ、だったのに。
それだけ、なのに、どうして、だろう。彼女、のあまりに真剣な目のせい? それとも、私にあった疑念?

迷う間もなく、彼女を愛車に乗せ、めぐめぐたちの後を追っていた。