あのね、先輩



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一年間


先輩とは離れて過ごすことが増えたけれど


私が無事に先輩と同じ高校に入学してからは、学校でもまた会えるようになった




けれど、他のカップルとは違ってたね




デートは三ヶ月に一回


その代わりに、二人で図書室で勉強する



会話はあまり無かった



それでも幸せだった



誰よりも長く、先輩と一緒に居られるのは私だって思ってたから



会話も中学生だった頃より少なくなった


もともと喋らなかった先輩は、もっと喋ってくれなくなった



返事はいつも、「うん」とか「そう」



二言目はない


これ以上、声を出すなって言うみたいに


視線すら合わない




これが先輩のお付き合いの仕方なら合わせなきゃって思った





でもね



本当はずっと悲しかったの



会ってくれるのは放課後だけ


生徒が誰もいなくなった図書室でしか会話してくれない



一度、お弁当を作って、先輩の教室に行ったことがあった



どうしても一緒に過ごしたくて




教室のドアから「空先輩っ」て声を掛けたら



いつも表情が変わらない先輩が、ツカツカと私のところまで来ると、静かに言った



────「何しに来たの」

────「いいから、こういうの。……放課後まで待てないわけ?」


────「早く帰って」



いつもより低い声で、怖い顔で



それだけ私に言うと、教室の扉を閉めて背中を向けていなくなってしまった