────────………
空先輩の字が好きだった
正直に言うと、それ以外は全く好感が持てなかった
先輩に最初に会ったのは中学生の時
委員会がたまたま一緒だった
アンケート用紙に名前を書くことがあって、席が前後だった私達は、先輩から回ってきたプリントを見て驚いた
「き、汚い」
「………は」
小声で言ったつもりが、先輩にはばっちり聞こえてたみたいで、怪訝な顔をして振り返られた
「あ、あはは、すみません……」
「…………」
いつも無表情
無口で冷たい
それが先輩の印象
それと、
「……書き直す」
そう言って、私の手からプリントを取ると、机に向かって本当に名前を書き直し始めた
………素直か
イメージと違った先輩
「………はい」
戻ってきたプリントに書かれていた名前は、先程の字と対して変わってなかったけれど
不器用で嘘がつけない
真っ直ぐな字
「空、先輩」
声に出して読めば、またしても不機嫌に振り向く先輩
「何?」
「むふふっ!いいえっ、仲良くしましょーね!」
「………やだ」
「えー?」
ふざけて笑えば、不機嫌に見えたその顔も少しだけ笑ってくれた気がして
その日が先輩との最初の会話だった


