「咲」
先輩の声
ゆっくりと近づく体温
それはそっと私の手をすくった
「…………嫌?」
「………嫌じゃないです」
「そっか」
存在を確かめるように指を撫でられる
優しく触れるてくれる先輩に、私もそっと握り返す
「………咲、好きだ」
静かに、言葉を落とした先輩
パッと顔を上げて顔を覗く
「……………真っ赤」
「…うん」
こんな先輩見たことない
恥ずかしそうにしているけど、私の手を握っている手は離れなかった
「………聞いてくれる?」
「はい」
少しだけ寂しそうに笑う先輩を真っ直ぐに見て話を聞いた
「咲が他の奴の視界に入ることが許せない」
「…………え?」
「勝手に咲のことを好きになるのも、咲のことを話してるのも許せない」
「………せ、先輩?」
「あと、毎日年中無休で可愛いすぎて、俺の心臓と目が悲鳴を上げてる」
「…………」
我慢してたものを一気に吐き出したように、先輩は言葉を繋いでいく
「それと、………あの日、……キスしてない」
「………あ」
「でも、ごめん」
あの日
私が先輩から離れることを決意した日
そっか、そうなんだ
思ったよりもストンと心の底に落ちて、モヤモヤはあっという間に消化された
先輩は、「こうやって守った」と、口元を手で覆って再現してくれた
その姿が可愛くて、笑ってしまった
私の手を握り直すと、先輩は言った
「言葉も足りないし、正直つまんない人間だって自覚はあるし。………嫉妬もするし」
けど、
「咲のこと離してやれない」
優しく触れてくれる先輩は、私の髪を撫でた
「彼女になって?」
手は繋がったままなのに切ない顔をして、そんなことを言うから
どこまでも不器用な彼に伝える
「そのうち、先輩のお嫁さんにしてくれるならいいですよ!!」
ガバッと抱きつくと、しっかり受け止めてくれた
腰に回された腕にしっかりとした愛情を感じる


