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朝、泣き腫らして登校した私を見て、弥生がまた憤怒した


「あんの野郎!!今度咲に近づいたらまじで、顔面フルボッコにしてやる」


「弥生、あんまり腕を振り回さないの…」


弥生の姿に笑いながら、教科書を机の中にしまう



「………あれ?」

「どうしたの?」


ガサッと何かが引っ掛かって教科書がうまくしまえない


しゃがみこんで机の中を覗く


「え、何それ。クチャクチャの紙?」

「いや、たぶん今引っ掻けちゃったから…」


クシャリとなってしまった紙を丁寧に広げる


片手で収まるくらいの紙を見て、目を見開いた








 
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     放課後、いつもの場所で待ってる
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たったそれだけ


名前もない


封筒にも入ってない



けど、



「わぁ……汚い字ね」

「うん………そうだね」



こんなのすぐにわかる


空先輩



私ね見つけちゃったよ



文の始めに、消ゴムで消した跡



うっすら残ってる“ごめん、会いたい“の文字





どこまでも不器用な先輩



けど、たった紙一枚で私の心は穏やかになって


笑顔になれる











放課後



夕焼けの図書室には、いつも私が一番に着いてた


だって、図書室に入ってくる先輩を見るのが好きだったから

私のために会いに来てくれてるって実感できたから




けど、





「……………咲?」





扉を開いた先


初めて私より先に着いていた先輩が、目を丸くして立ち上がったから、笑ってしまった



待ってて貰うのも嬉しいんだね



「どうして驚くんですか?」

「いや、………もう会えないと思ってた」


そんな、大袈裟な…


顔を逸らして、合わない視線


静かな図書室



居心地が悪いと思ったことはない


ただ……合わない、私を視界に映してくれないことが悲しかっただけ




けど、




今日はしっかりと視線が合っている


今度は私が恥ずかしくなって視線を横にずらした