あのね、先輩


いよいよ、先輩と会えるのは図書室だけになった


休日に会うこともない


話せるのは放課後の一時間



それでも、また話せることが嬉しくて




合わない視線も



続かない会話も



冷たい態度も






気づかないふりをしてた







好き



大好き




離れたくない




そればっかり思うようになった





けど、





限界ってくるもので



突然だった








その日は、放課後になっても先輩は来なくて



スマホを確認したら先輩から、一言


『先帰る』



それだけ




しょうがないか


毎日、放課後会ってくれてるんだもんね


たまにはすぐに直帰したい日もあるよね




悲しさを誤魔化すように一人でウンウンしながら歩いていた



お気に入りの音楽をヘッドフォンで流しながら




玄関に向かっていた足が止まる




……………空先輩?




と、誰だろう




黒髪の可愛いショートヘアの先輩




何か話している様子





………………先輩。帰ったんじゃなかったの?



嘘、ついたの?



空先輩のブレザーを握っている女の子



離れてよ、どうしてそんなに近いの?


遠くて表情は見えないけれど、確かに空先輩だし、二人は話し込んでいる



流していた音楽を止めて、先輩に声をかけようと思ったとき、








「…………………へ?」







自分でも驚くほど情けなくて変な声が出た