六月十四日。
世間は梅雨に入ったらしい。
昼になっても外は薄暗く、街を行く人々は皆傘をさしている。
大きなビルに挟まれたこの土地は元々、滅多に日差しが入ってくることはないが、それと比べてもやけにどんよりしている。
俺は雨が嫌いだ。
朝から晩まで絶えることなく、嘲笑されている気分になる。
普段なら五分程度に感じるこの道も、何か進む気になれない。
どうせ学校へ行っても俺の居場所はないし、行く意味なんて本当は無いのだろう。
だが、目的もなくここにいるのは違う気もするので、家を出る。
時刻は午前七時半過ぎ。出勤のため、多くの人が街に出ていた。
疲れのとれていなさそうな大人を横目に見ながら、只管歩みを進める。
駅前のカフェに逃げ込んでしまおうかと思ったが今日はやめておこう。
そうこうしているうちに着いてしまった。まぁどうせ用事があるからこうなることは解っていたけど。こんなに早く学校に来た理由は、委員会の仕事があったからだ。ていっても仕事は少ししかない。三十分間の換気、それから貸出管理用パソコンの起動。其れだけ。
いつもこうなるから、一人、本を読む。
今日読んだのはごく普通の恋愛小説。 しかし、俺は何も感じなかった。
「普通」の人ならば何かが変わるのかもしれないがやっぱり何もなかった。
俺は感情というものが何なのか解らずにいる。喜び、悲しみ、怒り、嫉妬。
名前は聞いたことがあるが何なのか。