恋愛偏差値が思いのほか低かった私は、この時は自分が竜也くんの”彼女”になるなんて畏れ多かったのです。

もちろん、ちょっと憧れてはいますよ!?

綾乃ちゃんにも


”美咲以外の女の子が竜也くんの彼女になったらどうする?”


と質問されて、とても嫌だと思ったうえに泣いてしまったくらいですから。


ただ、彼女とか嫁とか言われると身の置き所がなさすぎて、ですね。

もうしばらくはシンプルに”下僕”の肩書こそが丁度いいと思ったのです。

そしてそれが一番平和に竜也くんの傍に居られるのだと信じて疑っていませんでした。

竜也くんの下僕に戻れた安心感でいっぱいの私の背後で、


「え、なに?」


「委員長ってば竜也の彼女じゃなくて下僕のままってこと?」


「どういうこと!?」


「要は都合のいい女=藤原美咲ってことでしょ」


そんなことがコソコソと聞こえないように囁かれていたことや、


「あちゃ~、こんなところで竜也の天然が力を発揮するとか・・・」


と頭を抱え込んでしまわれた虎谷くんや、


「サイアクだよ~~~!トラくんどうしよう!?」


自分のせいで私が下僕に戻ってしまったと落ち込む綾乃ちゃん。

お二人が私の隣で額を寄せ合って秘密の相談を始めたことに気づかないまま、体育祭は進んでいったのです。