慌てて踵を返して去ろうとした瞬間、目の前にあった扉におでこをぶつけてしまった。


ガンッという鈍い音と共に、ジンジンとおでこが痛みだす。



うわぁ……私の馬鹿!



その時、「倉木(くらき)さん?」と名前を呼ばれてしまった。



見なかったことにするのは、もう無理なようで。


静かに振り返ると、神城くんが柵に寄りかかってこちらを見ている。


慌てて煙草を隠す様子もない。


え、強くない?同級生に見られてんのに。


神城くんは真っ直ぐに私を見つめる。



整った顔だとは思っていたけど、正面から見るとそれがよくわかる。


彫刻のような綺麗な顔……。


こんな風にちゃんと見たのは初めて。